「withコロナ」の時代の中、アウトドアでの開放感からか、キャンプが再びブーム。大型店やホームセンターではキャンプ用品の特設コーナーが設けられ、家族連れなどに人気のようです。
今から四半世紀前の1990年代、私もファミリー・オートキャンプにはまり、友人たちと競うようにキャンプ用品を買いそろえたものです。まずはテントや寝袋、テーブルとイス。さらにランタン、調理用のバーナーやグリル。キャンプでのメーン料理はもちろんバーベキュー(BBQ)。これをやるためにキャンパーになった、という人も。
「肉の日」の4月29日。バーベキューのスペシャリストで、専門店「肉広場」オーナーの伊藤智博さん=秋田市=に、あらためてバーベキューの極意を聴く機会がありました。しかし開口一番、私の長い(だけの?)「アウトドア経験」と、それに基づく「キャンパーの自信」を根本から打ち砕く発言が…
「多くの人が誤解してますが、焼肉とバーベキューって違うものなんですよ」
伊藤さんはさらに言葉を続けます。「焼肉は『焼きながら食べる』のが一般的。しかし、アメリカのバーベキュースタイルは、肉や野菜をまず焼いてしまい、それを切り分け、お皿に綺麗に盛り付けてから食べるというのが基本。ホストが肉を焼き、それをテーブルに運んでゲストに振る舞う、という形です」
えっ、じゃこれまでやっていたのはバーベキューではなく、焼肉スタイルだったのか…
伊藤さんは元秋田市地域おこし協力隊員。同市内の高校卒業後、防衛省で災害派遣に関わる事務などに携わってきました。25年務めた後、故郷に戻ることを決意。バーベキューを通してさまざまな人が交流することが地域活性化につながると考え、数多くのイベントを実施。そして、市内にバーベキューが手軽にできる環境が少ないとして、専門店「肉広場」を開店。バーベキューの人をつなぐ力を生かして地元を盛り上げたいと考えているんです。
「アウトドア・バーベキューに欠かせない豊かな自然、何よりもおいしい食材がそろっているのが秋田」と伊藤さん。主宰するさまざまなバーベキューイベントやキャンプの楽しみをSNSで発信、秋田の魅力を伝え続けています。目指すは「日本一バーベキューを楽しむ市・秋田市」。心躍る、ワクワクするキャッチフレーズです。
(し~なチャン YouTube)
バーベキューを楽しむための最初のハードルは「炭おこし」。私も苦手です。延々と団扇であおぎ続けながら、炭がおこせず顰蹙を買ったこともしばしば。いよいよ火がついても、うまくコントロールできない悲しさ…「炭」を扱えてこそヒーローなのに。「炭」を簡単に扱うプロのコツってないんでしょうか━
「三種の神器、と呼ばれるグッズがあるんです」と伊藤さんが紹介してくれたのは「チムニースターター」「火消し壺」「水鉄砲」。
チムニーは「煙突」のこと。チムニースターターとは、暖かい空気が上昇気流を起こす原理を利用して、あおいだりせずに放っておくだけで炭をおこすことができる優れもの。「火消し壺」は、火がついた炭を消火でき、そのまま持ち帰ることが可能なグッズ。安全かつすぐに消火したい方はもちろん、消火した炭を再利用したい方にも便利。消し炭を持ち帰りすることで、自然環境にもやさしいですね。
ただ、気になるのが、三つ目の「水鉄砲」。肉を焼きながら子供たちと遊ぶ?
バーベキューの焼き方の基本は「遠火の強火」、とされます。炭の遠赤外線効果で、中まで火を通すため、ということですが、脂質の多い肉からは油がしたたり、それが引火して燃え上がることが(個人の体験として)よくありました。炎だと肉が焦げてしまいますし、ススもついて悲惨な結果になることがしばしば。
「そんな時こそ、水鉄砲でひと吹き。ピンポイントで炭火を狙う。ピンポイントで炎を消すのに、このぐらいの水量がちょうどいいんです」。カーボーイハットをかぶったバーベキューの達人は、水鉄砲を手にクールにそう話してくれました。これこそ大人の遊び心。百円で手に入るし、ね。
最後に伊藤さんは、withコロナの中で楽しむ『wit新型コロナ時代のバーベキューの心得10ヶ条(日本バーベキュー協会https://jbbqa.org/参照)』を披露。「密にならない、頻繁な手指の消毒、大声を出さない…など基本的なことです。そして自然環境や安全に目を配ったうえで、バーベキューを楽しんでください」と話してくれました。
分かりました、「10ヶ条」ですね。すぐにもホントのバーベキュー、再トライしてみたくなりました。あれ、でも待てよ。伊藤さんに最も大切なこと、「肉の焼き方」を聞いてなかった…いやぁ、これは悔やまれます。
残念ながら、この日の番組は時間切れ。伊藤さんからは、肉の達人講座Ⅱ、今度は「焼き方」の特訓を受けなくては。