皆さんは「美術館」に対してどんなイメージをお持ちでしょうか。
「美術館でおしゃべりは禁物。静かにしなきゃ」「順路も決められちゃって、なんだか窮屈」「美術ってどうも”敷居”が高い感じがして」。
そんな固定観念を持たれている方も少なからずいらっしゃるかも。でもそれ、まったくの誤解です。
「美術館」は大きく変わろうとしています。「おしゃべりOKの日」もあるし、「順路は、あくまで楽しむためのガイド」で、好きなように回っていいんです。それに「美術、アートを楽しむための仕掛け」もふんだんに。さまざまな「誤解」や「思い込み」が見えない「壁」になって、ホントは魅力いっぱいの「美術館」と距離を置いてしまっているのなら、本当にもったいないと思います。
きっかけは2023年4月、美術館を含む「博物館」を規定する法律「博物館法」が実に70年ぶりに大改正されたこと。博物館や美術館はこれまで、「社会教育施設として資料の収集・保管や展示・教育、調査・研究を行う機関」とされていました。しかし、法改正後、それに加えて「地域や自治体、学校などと連携を図りながら文化観光やまちづくりなど地域の活力向上へ努める」ことが求められるようになったんです。
つまり、美術館・博物館が、地域のひとつの「コミュニティセンター」のように気軽に立ち寄れる場、楽しくてワクワクするホットスポット(※注目されるトレンドな場所)を目指す、ということですね。
CNAの生番組「し~なチャン」では「シニアのイキイキライフを応援」との掛け声のもと、「ALL-Aコーナー」として毎回、シニアに役立つ情報をお届けしています。
先日のゲストは県立近代美術館(横手市)の学芸主事北島珠水さん。近代美術館が核となってさまざまな機関と連携し、アートを通じて地域づくりを目指そう、という「みんなのキンビ」プロジェクトについてお話いただきました。
これまでプロジェクトでは「美術館を気軽に利用できない人々へアートを届け、交流の場をつくる」という目標のもと▽認知症の方を含めたシニア向けの鑑賞プログラム▽社会的に孤立しがちな子ども・若者向けのアート活動▽障害のある人たちへの鑑賞支援━などに取り組んできました。2月から3月にかけて同館では「笑い」をテーマにした「笑う!はひふへほ展」を開催、たくさんの人が「つながり合う場」に。

どの取り組みも魅力的ですが、今回紹介したいのはALL-Aと一緒に取り組んだ「デジタルを活用した”仮想美術館”」と、「認知症の方、シニアの方を対象にした鑑賞プログラム」です。
【デジタルを活用した”仮想美術館”】
近代美術館ではインターネット上に、美術館と、所蔵する秋田ゆかりの作品を構築した「3次元の仮想空間(メタバース)」をつくり、その空間で利用者がコミュニケーションをとったりコンテンツを体験したりできるプログラムを行っています。高精細な3D映像で展示された作品は、視聴者が耳を傾ける音声ガイドや解説も組み込まれ、至れり尽くせり。

体験したALL-A会員は70代、80代の方々。実際の美術館を訪ねたわけではなく、ALL-A社内で「VRゴーグル」を装着する、いわゆるデジタルの「出前美術館」でしたが、参加した方々は「メタバースであることを感じさせなかった」「没入感があって、とても楽しい鑑賞だった」と口々に話していました。
【認知症の方、シニアの方を対象にした鑑賞プログラム】
認知症の人が美術館に出かけ、芸術作品を見て感じたことを自由に語り合う-米国生まれの手法(対話型芸術鑑賞法)が介護現場ではすでに取り入れられています。アートには「脳を活性化し、前向きな気持ちを引き出す効果」が期待され、予防対策として取り組む動きが広がっています。
普段はあまり表情を見せない方々も、思わぬ反応を見せる、といいます。付き添って来られた介護支援の人たちから「最初は緊張していた方が、次第にイメージが膨らみ、昔のことを思い出す様子が見られた」「美術館で鑑賞するとき、会話をすることはなかったので新鮮だった」という声が寄せられました。
美術館は、ただの鑑賞の場ではなく、ピュアな感情が行きかう交流のホットスポットに進化しています。皆さんも実際に「シン 美術館」を体験してみてはいかがですか。
記事:ALL-Aサポーター・元魁新報記者:西村修