映画「男はつらいよ」が大好きです。
特に好きなのが第5作「望郷編」。遅く起きてきたフーテンの寅さん(名優・渥美清さん)が、朝食の用意をするおばちゃんに、理想の朝ごはんについて語ります。
「暖かい味噌汁さえあれば充分よ。あとはお新香、海苔、たらこ一腹。ね、辛子のきいた納豆、これにはね、生葱細かく刻んでたっぷり入れてくれよ。あとは塩昆布に生卵でも添えてくれりゃ、もうおばちゃん、何にもいらねえな」
もちろん、おばちゃんは「何言ってんのよ!」と怒り心頭なんですが…
ただ、寅さんが触れてないものがあります。それは「おコメ」。当たり前すぎて寅さんは触れなかったんですが、もし私だったら、一番先に「ほかほかのご飯、それもピカピカの秋田米は欠かせねえな」と言いたいところです。
前置きが長くなってしまいました。
言いたかったのは、秋田のおコメは最高、ということ。
秋田県の基幹産業は「農業」です。中でも、おコメ(水稲)の生産力が極めて高く、作付面積・収穫量とも全国トップクラス。ブランド米として「あきたこまち」の栽培が盛んなほか、『米どころ秋田』として、酒米の生産振興にも力を注いできました。
ただ、その『米どころ秋田』が揺れています。近年になって「人手不足」「高齢化」「技術継承」などという問題が、秋田の農業が抱える問題としてクローズアップされています。「秋田のおコメ、大丈夫か」そんな不安も…
こうした中、私の不安を吹き飛ばしてくれる、頼もしい「新農業人」と出会いました。
「農業はまだまだ可能性がある」「今、農業の時代が『来てます』」
そんな力強い言葉をいただいたのが今回のゲスト、秋田市雄和の農事組合法人「アグリあいかわ」代表の伊藤洋文さん(67)、そしてピカピカの新入社員・田村修也(21)さんです。
「アグリあいかわ」は、秋田市の優れた農業の取り組みを表彰する2020年度市農業大賞を受賞しました(2月8日付秋田魁新報)。
閉校した地元の旧戸米川小学校体育館を活用した出荷施設(ライスセンター)の整備や、もみ殻のリサイクルなどの独自の取り組みが評価されたんです。
「アグリあいかわ」は地元相川地区の農家38戸で構成され、17年に発足。計84ヘクタールの土地でコメや大豆、ネギなどを栽培しています。旧小学校体育館に整備した「ライスセンター」は収穫後のコメの乾燥から出荷までの作業を一括で行える優れモノ。そして、センターで出たもみ殻は、近くの牧場に提供、もみ殻と家畜のふんを混ぜた堆肥を栽培に使う『循環型農業』を実践しているんです。
し~なチャンYouTube
「まさか大賞なんて思いもしませんでした。でも、いただいたからには、コメだけではなく、多様な作物の栽培や若手農家の育成などに挑戦し、大賞に恥じないように今後も頑張りたい」と伊藤さん。
「愛着ある校舎を再利用したいとずっと思ってきました。それが実現できてうれしい。相川地区は農家の高齢化が進み、担い手も減少しています。これまで地区には法人組織がありませんでした。今後は地域農業の受け皿になりたい、雇用の面でも地域に貢献したい」と話してくれました。
さて、もう一人のゲスト、若手のホープ田村さん。
大相撲・豪風さんも所属した金足農の名門相撲部出身です。体が大きくて強そうですが、話してみると優しい笑顔が魅力的な、さわやかな青年でした。農業高校出身ということで、実家も農家かな、と思っていたら、意外なことに「非農家」とのこと。田村さんは胸を張って話してくれました。
「金足農は多様な学科があり、卒業生が必ずしも農家を継ぐ、農業をやる、というわけでもないんです。ただ、自分は高校で農業というものが好きになった。やりがいがある産業だと思う。今、農業の時代が『来てます!!』」
後継者不足などの理由で、「農業は衰退産業」としてイメージされた時期もあったように思います。でも、テクノロジーの進化に伴い、ロボット技術やICT(情報通信技術)を導入する「スマート農業」も登場。秋田の農業、その未来は大きな可能性を秘めています。お二人の力強い言葉を聞いて、あらためてそう思いました。
農業、『来てます!!』