「奇跡のショット」が生まれたのは11月9日、「モルック日本大会in秋田」大会初日の予選トーナメントでした。相手は「世界のカワノ」ことモルック世界チャンピオン河野靖信(かわの やすただ)選手が率いる「RATEL(ラーテル)」。
「えっ、初戦が”世界一”のカワノさんのチーム…」
組み合わせ表を確認したメンバーはしばし絶句。ただ、チームのムードメーカーである西村幸一さんが一言。「うーん、まあ、名前負けすることなく…。初めてなんだから、ビビることなくぶつかろうよ」と力強い一言。下を向きつつあった他のメンバーを鼓舞してくれました。
しかし、さすが優勝候補の筆頭(実際に優勝でしたが…)「RATEL」。にこやかに挨拶を交わした後は淡々と得点を積み重ねます。モルックは「相手より早く50点を取った方が勝ち」とシンプル。あれよ、あれよ、という間に50点を取られ、1セットを失います。まさに格闘技でいえば”瞬殺”(一瞬で相手を倒すこと)。
予選トーナメントでの各試合は「2セット」のみというルール。このまま2敗で終わってしまうのか…。ちょっぴり肩を落とし気味になったメンバーたちでしたが、「世界一のチームとできるなんて幸せなこと。楽しもう」との声が上がります。
ただ、「ALL-A」チーム、2セット目もなかなかペースがつかめません。こちらがようやく「20」点を取ったものの、そのとき「RATEL」はすでに「48」点。あと「2本」倒すだけで勝利です。しかも、フィールドに残った2本はイージーな位置…
「スカイドームの人工芝は要注意ですよ、思いがけないバウンドをします」
試合前の取材で語ってくれたモルック協会関係者の言葉。実はその通りになります。
「RATEL」メンバーが「2本」を”楽勝”で倒したかに見えましたが…何と人工芝でモルック棒がバウント。後ろの1本も倒してしまったんです。
モルックの得点ルールは「50」点を1点でもオーバーすると、ペナルティで半分の「25」点になります。つまり「RATEL」は25、そして対する「ALL-A」は20。
決められた試合終了時間が迫り、あとは「ALL-A」メンバーの一投だけ。50点に達していなくても、その時点で高い得点のチームの勝利。つまり、あと「6点以上」とれれば…
「ちょっと離れた、あの9点のピン、イケるんじゃない」
みんなの期待を背負った最後のプレーヤー・松枝由香子さん、プレッシャーがかかります。モルックを始めて2カ月。松枝さんが狙います。
「これまでの人生で一番(心臓が)バクバク…」。そう言っていた松枝さん、思い切って投げたピンは、見事に「9」点ピンを弾き飛ばしました。これで25対29、2セットは大逆転勝利です。
終わってみれば、あの「RATEL」と闘ってイーブン。松枝さんに駆け寄る他のメンバー、笑顔、拍手、喝采。河野さんたち「RATEL」のメンバーからも祝福の拍手が送られました。
「モルック最高」と「ALL-A」チームのメンバーたち。「河野さんたちのプレー、ほかのチームのプレーを見て刺激を受けた」「今後は『楽しい』だけじゃなく、技術、戦略も学んで『勝ちたい』」と口々に話していました。
これからのALL-Aチームの成長、楽しみです。